研究課題/領域番号 |
22740185
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
坂口 聡志 九州大学, 大学院・理学研究院, 助教 (70569566)
|
キーワード | 実験核物理 / 理論核物理 / 中性子スキン / 弾性散乱 / 不安定核 |
研究概要 |
研究の第2年度にあたる本年度は、初年度に測定した安定錫同位体116Sn,120Snからのアイソヌピン一般化陽子弾性散乱の微分断面積データに関してデータ・理論解析を進めた。同時に、不安定核の研究に本手法を適用するための検討を行った。 <理論解析手法の開発> 理論解析の手法を議論するため、オハイオ州立大学から微視的反応理論の専門家であるCh.Elster氏を招聘し、関連する実験・理論研究者15名程度を含めた小規模なワークショップ「陽子-不安定核弾性散乱における偏極現象」を理化学研究所にて開催した。 また、ワークショップを機に、九州大学の理論研究者らとの共同研究を開始した。京大グループによる通常の陽子弾性散乱の理論解析手法を(p,n)IAS反応に適用するためには相対論的インパルス近似法を用いた手法の開発が必要である。一方この手法の開発には非常に精密なデータの取り扱いが必要であるため、並行して畳み込み模型による手法をアイソスピン空間に拡張し実験データの解釈を準めている。 <不安定核ビーム実験の検討> 本研究では、安定核について中性子スキン厚の測定方法を確立し、それを将来的に不安定核の研究に応用することを目的としている。研究計画においては前者のみを目的としていたが、次の計画のために最終年度にテスト実験を行うこととし、その計画を東京大学・理化学研究所の研究者と立案した。具体的には、陽子数に比べて3倍の中性子数を持ち厚い中性子スキンを有する典型的な不安定核8Heについて、(p,n)IAS反応の微分断面積を測定することとした。テスト実験の場所としては、世界最大強度の8Heビームを供給することのできる理化学研究所のRIビームファクトリーを選択した。年度の終了時点で実験セットアップは構築されており、最終年度の4月に二週間にわたり測定を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の第一段階及び第二段階にあたる複数の錫同位体の実験データを既に取得し、データ解析を終了した。さらに、最終的な研究対象にあたる不安定核に関しても、研究の最終年度にテスト実験を行う計画が立っており、実験の面では当初の計画以上に進展している。一方、理論模型の開発と論文執筆については今後重点的に進める必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では、安定核について中性子スキン厚の測定方法を確立し、それを将来的に不安定核の研究に応用することを目的としている。研究計画においては前者のみを目的としていたが、次の計画のために最終年度にテスト実験を行うこととした。具体的には、陽子数に比べて3倍の中性子数を持ち厚い中性子スキンを有する典型的な不安定核8Heについて、(p,n)IAS反応の微分断面積を測定する。実験は世界最大強度の8Heビームを供給することのできる理化学研究所のRIビームファクトリーで2012年4月に遂行し、安定核で得られた手法がいかに不安定核の研究に適用できるかについて検討を進める。同時に、高精度の理論模型の構築を進める。
|