平成22年度は、主にゲージヒッグス統合模型における余剰次元空間の安定化についての研究を行った。 ゲージヒッグス統合模型は高次元ゲージ場の余剰次元成分が電弱対称性を破るヒッグス場の役割を果たす模型で、標準模型が抱えるゲージ階層性問題を解決する模型として注目を集めている。特に余剰次元方向に曲がった計量を持つRandall-Sundrum時空上のゲージヒッグス統合模型は現象論的にも様々な良い性質を持っており、ここ数年盛んに研究が行われでいる。 一般に余剰次元模型を考える場合いは、余剰次空間が有限な大きさにコンパクト化されていなければならず、余剰次元の大きさを安定化させる機構が必要不可欠である。そのような機構として5次元場による量子効果によって安定化を実現するものがある。この機構はゲージヒッグス統合模型と相性が良く、新たな場を導入することなく既存の量子場のみで安定化を実現することができる。このことは余剰次元の存在に伴って出現するradionと呼ばれるスカラー粒子に対し、その質量や他の粒子との相互作用について具体的な予言を可能にする。 そこで私はSO(5)xU(1)ゲージ群に基づぐRandall-sundrum時空上のゲージヒッグス統合模型を考え、量子効果による余剰次元の安定化の可能性について調べた。私は観測されている実験事実と無矛盾な様々な模型を考え、余剰次元の安定化が起こる為にはbrane上に局在したゲージ場の運動項が必要であることを示した。また、radionとヒッグス粒子の質量は典型的にはそれぞれ1-30GeVと150-200GeVであることが分かった。更にradionとゲージボソン、フェルミオンとの相互作用は非常に弱く、加速器実験による直接観測は難しいことも判明した。
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