平成23年度は、主に5次元超重力理論に基づく余剰次元模型についての研究を行った。 5次元超対称理論は最も単純な超対称余剰次元模型として多くの研究がなされている。一般に余剰次元模型を考える場合、余剰次元の大きさを有限な大きさに安定化させる機構が必要になる。このような機構を議論する為には超重力理論の枠組みで考えなければならないが、超重力理論の作用は複雑な為、従来の多くの仕事ではあまり議論されていなかった。そこで私はこのような超重力理論を見通し良く扱う為に5次元作用をN=1超場を用いて記述することを目指している。本年度はこの目的に向けた準備として4次元超重力理論の超共形定式化と線形化された超重力理論との関係を明らかにすることを試み、成功した。本研究により、既存の5次元off-shell作用をN=1超場で記述する為の基礎が確立した。この成果は5次元のみならずより高次元の超重力理論のN=1超場による記述を導出する際にも有用である。5次元作用の記述についての研究は継続して続行中であり、次年度の早期に成果を発表できる見通しである。 一方、早稲田大学の研究グループと共同で、5次元超重力理論の既存の定式化を用いて現実的な模型を構築することも行った。具体的には比較的一般的な超重力理論の枠組みで最小超対称標準模型を実現する5次元模型を考え、その4次元有効理論を導出し、その現象論的考察を行った。この模型ではフェルミオン間の質量階層性を自然に実現するような機構を採用すると、ある条件下では必然的に対応する超対称粒子の質量が高精度で縮退し、従って超対称フレーバー問題が自然に解決される。研究結果は論文に纏められ、現在雑誌に投稿、査読中である。
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