超薄型の水素標的を作成するために最大の課題である隔壁の性能検証実験を行った。 前年度にナノ薄膜を理研ベンチャーであるナノメンブレムより厚み200μmの薄膜の調達することができ、テストを行ったが、テストの段階で物理的強度が不十分という結果で実用には不可と判断した。 そこで、市場で調達可能な有機材料膜で最薄かつ物理的強度の高い薄膜として東レ製ミクトロン3.6μmに着眼し、極低温下での耐圧実験を行った。 セルとして厚み20mmの本体に20mmΦの窓枠の片面にミクトロン3.6μmを一方の面にハーバー膜6μmを低温用接着剤で接着し、本体に対してインジウム線をシールド剤とし固定した。有効厚み3mmのテスト用セルを作成し次の実験を行った。 1.常温大気圧下にてセル内部に窒素気体を封入し耐圧性を確認した。結果、少なくとも圧力差1.73気圧まで膨張変形をしながらも耐えられることが確認できた。 2.次に液体水素臨界温度18K以下まで冷却し、水素の閉じ込めができるかの確認を行った。18Kに到達した時点で0.5気圧の水素ガスを導入したところ、セル内部で液化を始め、5分後にはセル体積約10cm^3を液体水素で満たす事に成功した。 3.液体水素で満たされた状態で膜の変形度を2次元レーザー変位計で計測を行った。ミクトロン膜は透明な薄膜であるが、レーザーの反射光をCMOS画像で選択的に計測することでミクトロン膜表面の形状と裏面のハーバー膜の形状を同一セッティングで計測することが出来た。 本膜は極低温で液体水素を閉じ込めることが出来る事を実証し、詳しい形状についても詳細なデータを得る事ができた。その結果、厚さ12μmのルミナー薄膜(ヤング率4GPa)と等価の物理強度であり実用に耐えられることを検証した。
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