研究課題/領域番号 |
22740190
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研究機関 | 独立行政法人国立高等専門学校機構阿南工業高等専門学校 |
研究代表者 |
松尾 俊寛 独立行政法人国立高等専門学校機構阿南工業高等専門学校, 一般教科, 講師 (80392124)
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キーワード | ブラックホール / ストリング |
研究概要 |
23年度は、本研究課題の目的である超高エネルギーのストリング散乱過程を背景場も含めて記述する枠組みを構成する手がかりを得るため、曲がった時空上のストリング解、とくに、ストリング自身が作る自己重力場中の静的な解の構成に関する研究を行った。アインシュタイン方程式の解において、粒子自由度に基づく解は特異点定理によりホライズンを持つ解には必ず特異点が付随する。本研究では、非粒子、非等方な自由度であるストリング、メンブレーンを用いて実際にブラックホール解を構成することにより、ホライズンをもつが特異点のない解が存在することを示した。また、質量や弦の張力などのパラメータに解がどのように依存しているのかを詳細に検討した。このように非等方的な自由度を用いることで特異点のないブラックホール解を構成した研究はこれまでにない新しいものである。特異点は重力理論の破綻点であり、その存在はブラックホールの種々の問題を研究する上で障害になるものであったが、本研究で構成された解に基づけばこの問題にとらわれることなくホライズンの性質や蒸発について議論する設定が可能になる。現在はこの解をゲージ/重力対応の観点からハドロン物理へ応用することを念頭に研究を進めているところである。 また、超弦理論の枠組みで高励起状態の弦からの輻射確率の計算を行っており、これまでのところボソン輻射確率の計算と、フェルミオンの場合の予備的な計算が終了している。フェルミオンの場合も含めて弦の輻射確率とホーキング輻射を比較することができれば、ブラックホールと弦の対応をより広い枠組みで検討することが可能になり、結果として本研究課題である弦散乱によるブラックホール生成に関する有用な知見を与えることになるのではないかと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
LHCで行われた高エネルギーハドロン散乱実験に関するいくつかの結果に関して原子核物理の専門家と議論する機会があり、本研究課題と関連する問題がないか調査を行った。その間、高エネルギー散乱過程の反跳効果を背景時空に自己整合的に記述する平均場理論の研究を中断した。
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今後の研究の推進方策 |
高エネルギー散乱過程の反跳効果を背景時空に自己整合的にとりこんで記述できる平均場理論の構築を行う。また現在、超弦理論の枠組みで高励起状態にある弦からの輻射確率の計算を遂行中である。この問題に取り組むにはフェルミオン頂点演算子の扱いに習熟する必要があり、またいくつかの克服すべき課題があるが、文献調査や専門家との議論、意見交換によって進展させていく予定である。
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