本研究では、ナノチューブの低エネルギー電子状態を、チューブ表面の曲率やスピン軌道相互作用の効果を取り込んだ数値的および解析的な手法により調べた。同一谷内の左右進行波に速度差が生じること、有限長ナノチューブの離散準位には、境界条件によってノギスの様なスペクトル構造やスピン軌道分裂がみられることなど、従来の谷縮退描像では捉えられない電子状態が明らかとなった。ナノチューブにおいてスピンがどのように運動し緩和するのか、スピン状態が伝導特性にどう現れるのか、さらにはどのようにスピン制御できるか、といった諸問題を考える上で、本研究によって得られた知見は不可欠と考えられる。
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