研究課題/領域番号 |
22740196
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
江澤 雅彦 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教 (10504805)
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キーワード | グラフェン / 場の理論 / トポロジー / スカーミオン / メロン / バイメロン / グラフェン・ナノリボン / ナノグラフェン |
研究概要 |
現在の物性物理で最も注目を集めているものの一つに、グラフェン(graphene)及びグラフェン派生物質(ナノリボン、ナノディスク等)に付随する物理現象がある。ンド構造を決定し、バンドギャップを計算した。同様に重要な物質として、グラフェン・ナノディスクがある。これはグラフェンを円盤状に切り出して得られ、閉じた境界を持つ。ナノリボンはグラフェンの量子細線、ナノディスクはグラフェンの量子ドットに対応する。一枚のグラフェンをエッチングし各種機能を組み込むことも将来的には可能になると思われている。グラフェン・ナノ構造を用いた電気機械的性質を応用してメカニカル・スイッチを提案した。二つ三角グラフェンを接合し、波動関数の重なり積分が回転角によって変化する事を応用してナノメカニカル・スイッチを提案した。またグラフェン・ナノディスクを並べたグラフェン・ナノディスク・アレイのバンドを計算し、多重縮退した完全平坦バンドが存在することを示した。これによりグラフェン・ナノディスク・アレイが磁性元素を用いないで強磁性になることをしめした。レアアースを用いないで強磁性体を作成できることは今後の元素戦略の上でも重要になる。またジグザグ・グラフェン・ナノリボンを機械的に引っ張ることにより、人為的にパイエルス転移を起こすことでナノメカニカル・ストレッチ・センサーが出来る事を提案した。 またカイラル強磁性体中のトポロジカル励起についても研究を行った。カイラル磁性体中ではDzyaloshinskii-Moriya相互作用がスケールを与える。カイラル強 磁性体中にはコンパクトスキルミオンとコンパクトメロンが存在することも示した。また磁場と温度に対して相図を解析的に求めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今までグラフェン・ナノ構造の電気的性質を調べてきたが、それらの成果を応用して磁性元素を用いない強磁性体やナノメカニカル・デバイスの提案を行った。さらに強磁性体中のトポロジカル励起について理解を深め、スカーミオンやメロンなどが物質中に現れる事を明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
今年に入ってシリコンがハニカム格子をくんだシリセンが実験的に合成された。シリセンはグラフェンと同様に低エネルギー状態がディラック方程式で記述される。しかし、シリセンはシリコンの半券が炭素より大きいために、バックルした結晶構造を持つ。このため、シリセンは比較的大きなスピン軌道相互作用を持つ。このためシリセンはトポロジカル絶縁体になることが期待される。今後はシリセンにおけるトポロジーの関わる現象について研究を進めていく方針である。
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