研究課題
本計画の目的は、量子音響タブレンスの観測に向けた、気泡核生成の素過程の理解と、気泡の膨張収縮運動と外部音場の相互作用の影響を調べるものである。現在までのところ、気泡発生には少なくとも2つのパターンがあることが明らかになりつつある。一つ目は、超流動状態において比較的小さな投入エネルギーで起きる音波吸収現象である。今回、新たに超流動転移近傍の温度において極めて劇的な変化が生ずることが判った。すなわち、常流動状態では、ひとたび吸収が発生すると振動を与え続けている限り吸収し続けるのに対し、超流動状態では吸収は一瞬にして消滅し、また再びランダムな間隔で吸収と回復が繰り返されるという現象である。超流動であるか否かによって大きな変更があると言うことは、水中の泡に関するvapor bubble理論を超流動ヘリウムに応用することによって定量的に理解出来る事を示した。この理論は蒸気のみで構成された泡の周りでは絶えず蒸発か液化が起こっており、気化熱のために温度が空間的に一様ではなくなっているとする理論である。これを利用すると、泡の初期半径と周波数から蒸気泡の安定性を導き出すことが出来る。この成果は、日本物理学会第66回年次大会(東日本大震災の影響によりWEB開催)にて発表した。これは、低温液体中での不均一核生成によるキャビテーションを扱う物理では初めての研究成果であり、かつ、今後の発展方向を決定づける重要な発見であるといえる。関わるまた、類似の系の実験として、エアロジェル中の超流動He3の第4音波共鳴実験を行い、共鳴のエネルギー損失のメカニズムを常流動成分の運動形態から明らかにした。この成果はPhysical Review B誌にて公表され、またQFS2010にて口頭発表を行った。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)
Journal of Low Temperature Physics
巻: 162 ページ: 190-195
Physical Review B
巻: 82 ページ: 054521(1-8)