研究課題
本研究では、結晶表面上に構築した新奇な低次元構造の原子配置と低温における金属絶縁体転移のメカニズムを解明することを目的としている。本年度は、我々が見出した2種類の金属元素から構成されるIn/Si(111)-Ag表面上の一次元原子鎖構造について研究を行った。この原子鎖は、Si(111)-√3×√3-Ag表面上にIn原子を1原子層吸着させると出現し、一次元的な物性の発現が期待されるが、現在のところその原子配置は全く不明である。770 Kで√3×√3-Ag表面上へIn原子を蒸着した場合、蒸着中は√3×√3周期を保ったままであるが、蒸着後、基板の温度を室温まで冷却させると、一次元原子鎖の形成に伴う4×2周期の回折スポットが新たに出現した。√3×√3-Ag表面上の金属原子吸着では、√21×√21超構造の形成が知られており、安定な吸着サイトとして、√3×√3-Ag表面のAg原子が形成するトライマーの中心等が知られている。しかしIn原子の場合、それらサイトには吸着せず、下地の構造にはほとんど影響受けずに4×2超構造を形成することが分かった。走査型トンネル顕微鏡観察を行ったところ、Si(111)表面上のIn原子吸着で見られる一次元原子鎖に似た、4×2周期をもつ超構造が室温で観察された。Si(111)表面上のIn原子吸着では、120 K以下でパイエルス不安定性により8×2又は4×2構造に相転移するが、√3×√3-Ag表面上の場合、室温で4×2構造が出現した。すなわち、In/Si(111)-Ag表面では相転移温度が高く、室温ですでにパイエルス転移が起きていると考えられる。今後、反射高速陽電子回折(RHEPD)法による構造解析及び、光電子分光法を併用して、この新奇な一次元原子鎖の原子配置と電子状態を明らかにすることにより、一次元系の相転移の解明につなげる。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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