研究課題
グラフェンをベースとするスピントロニクスに於いて、強磁性電極からグラフェン内に効率的にスピン注入を行うことが重要な基盤技術の一つとなる。グラフェンへのスピン注入の効率化・制御にはグラフェン/強磁性金属界面の電子・磁気状態の理解が特に重要であると考えられる。本研究では、Ni(111)表面上に成長させた単層グラフェン(SLG)の二層構造(SLG/Ni(111))について、深さ方向を分解したX線吸収分光(XAS)と磁気円二色性分光測定(XMCD)を行い界面磁気構造の解析を行った。SLG/Ni(111)試料は超高真空化学気相成長(UHV-CVD)法を用いて作成した。始めに原子レベルで平坦なサファイア(α-Al2O3)基板上に膜厚30nmのNi(111)薄膜をエピタキシャル成長した後、短時間のポストアニールを行うことで、平坦なNi(111)表面を得た。次に約650度に保持したNi(111)薄膜に超高真空下(<10-6Pa)でベンゼンガス(C6H6)を100 Langmuirだけ曝露することでNi(111)表面にSLGをエピタキシャル成長した。Ni L端励起XMCD測定から、Niバルク層が面内容易磁化を示す一方で、SLG界面に隣接するNi原子層に垂直磁気異方性が生じていることが明らかとなった。C K端励起XMCD測定では、界面近傍のNi原子層の磁化方向に対応する形で、C 1s→π*励起領域に明瞭なXMCD信号が観測された。これはSLG/Ni界面で生じるπ-d混成によりSLGのπバンドのスピン-軌道相互作用が増大していることに因るものと考えられる。以上の結果を踏まえると、グラフェンへのスピン注入(検出)効率はPMAを示す磁性電極を用いることで大幅に改善されることが期待される。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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