当該年度には、カドミウム系のパイロクロア弗化物の合成条件を確立し、その基本的な物性の測定を行った。それにより、スピンフラストレーションの効果の検証を行い、また一部の物質については磁気転移を発見した。 まず、純良な試料の作成を目指して合成条件を調べた結果、カドミウムイオンが遷移金属イオンサイトの一部を置換していることが判明した。この事実に基づいて、様々な組成の試料の合成を行い、遷移元素の種類によって多少異なるものの、最低でも10%程度置換が起こることが明らかになった。そのさまざまな置換量の物質の基本的な物性の測定によって、置換量が少ない試料では、10K程度以下で磁気秩序が形成されるが、置換量の増加に伴って磁気秩序の形成が抑制されることが分かった。そして、低温での磁気エントロピーの放出の仕方が、置換量に伴って変化することを明らかにした。また、最も置換量の少ない試料に関して、強磁場下での磁化測定を行い、鉄の化合物において、磁気転移を発見した。この磁気転移は、クロムスピネルで見られる磁化プラトー相への転移の振る舞いと酷似しており、同様の現象が起きていると予想される。
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