本研究では圧力誘起磁気秩序を示す重い電子系イッテルビウム化合物に焦点を絞り、高圧下で誘起される磁気秩序相の磁気的な性質やその量子臨界性に着目した研究を行った。1.5GPa程度の比較的低い臨界圧力を有するYbCo_2Zn_<20>。に対しては新たに開発に成功した高圧下・磁場中比熱測定装置を用いて、また10GPa級の臨界圧力を有するYbNi_3Ga_9に対しては、超高圧下まで高い静水圧性を保持できるキュービックアンビルセルを小型化することで実現した3^He温度域までの物性測定に成功した。その結果、それぞれの物質において以下の結果を得た。 ・YbCo_2Zn_<20>。における圧力誘起反強磁性とメタ磁性クロスオーバー 従来の電気抵抗測定に加えて比熱・交流磁化率・中性子散乱実験を高圧下で行うことで、圧力誘起磁気秩序が反強磁性秩序相であることを実験的に明らかにした。また、高圧下・磁場中比熱測定からは、メタ磁性クロスオーバーを示す臨界磁場が加圧ともに低磁場へとシフトすること、またその臨界磁場近傍では比熱の温度依存(C/T)が強い発散傾向を示すことを見いだした。 ・YbNi_3Al_9における圧力誘起強磁性 10GPa程度の高圧下において交流磁化率測定を行うことで、YbNi_3Al_9における圧力誘起磁気秩序は強磁性相であることが明らかにした。また、磁化率の温度依存性や臨界圧力近傍における2相共存的な振る舞いから、圧力誘起強磁性秩序は1次転移的に出現することを指摘した。
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