研究課題
私の研究目的は、新しい研究分野として急速に注口を浴びつつある量子乱流研究に対し、その理解を深めるための新しい量子乱流研究を提案・構築し、理論的に解析することである。取り組む課題の1つとして、量子流体のトポロジーを変化させたときに、どのように新奇で多彩な性質を持った量子乱流状態を実現することができるのかというテーマがある。このテーマを研究する過程において秩序化ダイナミクスという、新しいテーマを研究する必要性があることが分かった。秩序化ダイナミクスとは、系を量子渦が存在しない無秩序相から量子渦が存在できる秩序相へ、状態を特徴づけるコントロールパラメーターを急激に変化させることで、無秩序状態から秩序状態へ劇的に変化させるときに見られるダイナミクスである。このダイナミクスを大きく支配するのが量子渦であるという点において秩序化ダイナミクス量子乱流に類似している。量子乱流と秩序化ダイナミクスの先行研究を比較した場合、超流動ヘリウムのような単純な量子流体の場合には秩序化ダイナミクスの方が理解が進んでおり、漁子流体のトポロジー変化に対して期待できる多種多様なダイナミクスは秩序化ダイナミクスの方が理解しやすいと思われ、平成23年度は秩序化ダイナミクスの、特に量子乱流研究に深く関連する部分における研究を進めることにした。本研究では、貸子流体を数値シミュレーション等で扱う際に現れる有限サイズ効果を、有限サイズスケーリングの手法を用いて、無限系で期待できる振る舞いへと外挿することが秩序化ダイナミクスで可能であること、またこの手法が量子乱流の解析に有効なことを明らかにした。また、同様のスケーリングの手法を用いることでコントロールパラメーターをゆっくりと変化させた状況を理解することもでき、超流動ヘリウムにおける秩序化ダイナミクスそのもののより深い理解につながるであろうことも明らかにした。
3: やや遅れている
「実績の概要」で述べたとおり、量子乱流をより理解するために、秩序化ダイナミクスを新たに理解する必要性があると判断し、その研究を進めたからである。ただし秩序化ダイナミクスの研究は順調に進んでいると思われる。
今年度は前年度に得られた秩序化ダイナミクスの知見および、主にスケーリングの手法を量子乱流研究に適用すること、トポロジー変化における秩序化ダイナミクスの変化を調べることが主な研究方針である。特に数値計算に対しては今まで進めている量子乱流研究のものを用いるので、テクニック的な問題は少ないと思われる。研究がスムーズに進まないと判断したときには東京大学の佐々真一氏、パリ第6大学のL.Cugliandolo氏の協力を得る予定である。またこれらの研究とは独立に前々年度から研究を続けている渦タイリングの研究も進める予定であるが、これに関しては慶応大学の新田宗土氏の協力を得る予定である。
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