研究概要 |
平成23年度は強磁性絶縁体コバルトフェライトのトンネル型スピンフィルター効果を評価するために,MgO(001)基板上にレーザーアブレーション法でレーザー強度(0.2,1J/cm^3)や酸素圧を変えてコバルトフェライト単層膜を作製し,磁気特性や結晶性を評価した.また,レーザーアブレーション及び電子ビーム蒸着を用いてMgO(001)基板上に鉄/MgO/コバルトフェライトを基本構造とする多層膜を作製し,フォトリソグラフィーにより数マイクロメートルのサイズの磁気トンネル接合(MTJ)素子を作製した. 20nmから100nm程度のコバルトフェライト単層膜は,001方向に単結晶成長することが明らかになった.また,^<57>Feに対するメスバウアー分光測定の結果,レーザー強度が弱いとコバルトフェライト単層膜は垂直方向に異方性を有し,膜面面内方向に磁気異方性を有するFeとの間でトンネル磁気抵抗効果を評価するには,レーザー強度を強くする必要がある事がわかった.そこで,本研究では基板温度を200℃,300℃,400℃としてレーザー強度を1J/cm3,酸素圧を2.OPa,設計膜厚3nmで試料作製を行った.磁気抵抗測定の結果,これまでのところ明確なスピンフィルター効果は観測されていないが,電流電圧測定の結果とシモンズの式を用いて,コバルトフェライトMgOのダブルバリアによるバリア幅及びバリア高さの評価を行ったところ,コバルトフェライト層の成膜温度が上昇するとともにコバルトフェライト層のバリア幅が単調に減少し,一方でMgO層とコバルトフェライト層のバリア高さが単調に増加していることがわかった.またコバルトフェライト層のバリア幅は設計膜厚の半分以下であり,下地層の凹凸がバリア層の絶縁性に影響を与えていることがわかった.
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今後の研究の推進方策 |
これまでのところ,強磁性絶縁体層の表面平坦性に問題があり,バリア厚さが設計値の半分以下になっている.トンネル磁気抵抗効果はトンネルバリアの質に大きく影響を受けるので,今後は,基板の平坦化処理及び成膜後のポストアニールなどにより,これまでよりも平坦な下地層を作製し,その上にコバルトフェライト層を作製することで,均質な強磁性絶縁体層を作製する.
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