研究課題/領域番号 |
22740227
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
齊藤 高志 京都大学, 化学研究所, 助教 (40378857)
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キーワード | 異常高原子値 / サイト間電荷移動 / 電荷不均化 / Aサイト秩序型ペロブスカイト |
研究概要 |
LaCu_3Fe_4O_<12>ほ温度誘起電荷移動現象を宗す極めて珍しい例であり、この現象にはCu^<3+>/Fe^<3.75+>といった異常高原子価イオンが係わっている。本課題の平成23年度の成果は以下の通りである。 (1)LaCu_3Fe_4O_<12>の高圧下メスバウアー分光実験から、3GPaにおいて圧誘起サイト間電荷移動が確認され、また10GPa前後において電荷不均化を起こすことを見出した。また(La,Ca)Cu_3Fe_4O_<12>固溶体試料について、広い組成範囲において低温で電荷不均化相と電荷移動相との電子相分離が起こることを見出した。これにより、酸素ホールがβサイトFeイオンと結合した電荷不均化相と、A'サイトCuイオンと結合した電荷移動相とが非常に近いエネルギーを持ち、拮抗していることが示された。異常高原子価イオンが関わるこのような電子相分離はこれまでになく、酸素ホールに関わる物理を理解する上で非常に重要な発見である。 (2)異常低原子状態Mnの存在が示唆されていたLaMn_3Ti_4O_<12>について、Ti/Mnの価数がそれぞれ+4/+1.66であることを確認した。また絶縁体であることから、LaMn_3Ti_4O_<12>ではA'サイトにMn^+とMn^<2+>がランダムに存在すると考えられる。さらに、LaサイトのCa/Na置換により4'サイトMnへの電子ドープが可能であることを示した。プレリミナリーな高圧下電気伝導測定実験では未だMn/Ti間の電荷移動現象は観測されていない。 これらの成果は、これまであまり知られていなかった異常高原子価イオンが起こす電荷移動や電荷不均化現象に関する理解を大きく広げた。さらにこれまで酸化物では報告されていなかった異常低原子価イオンMn+の存在を示したことは今後の新規物性探索に繋がる成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LaCu_3Fe_4O_<12>のメスバウアー分光実験から加圧下での価数状態が求められ、電荷移動や電荷不均化を確認することができた。さらに、固溶体試料において低温での電子相分離現象を発見し、その詳細を明らかにできた。また、LaMn_3Ti_4O_<12>において異常低原子価イオンであるMn+の存在を示すことに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
異常高原子価である+3価Cuイオンを含むAcu_3CO_4O_<12>について、イオン置換や加圧実験によるサイト間電荷移動及び電荷不均化現象の探索を行う。また、異常低原子価である+l価Mnイオンを含むLaMn_3Ti_4O<12>について、Mnイオンの電子状態について詳細を明らかにすると共に、10GPa以上の高圧力を用いてサイト間電荷移動現象の探索を行う。
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