研究課題
本課題の平成24年度の成果は以下の通りである。電荷移動を示すLaCu3Fe4O12(LCFO)と電荷不均化を示すCaCu3Fe4O12(CCFO)の固溶体(Ca1-xLax)Cu3Fe4O12を高温高圧力の条件下で作成し、結晶構造や電子状態とその物性変化を詳細に調べた。その結果、異常原子価イオンが酸素サイトにリガンドホール(酸素ホール)を作り、このリガンドホールの挙動がこの物質の特性変化を特徴づけていることを明らかにした。LCFOにCa2+を徐々に置換していくことにより、Cu/Feサイトへのホールドープが進むことを確認した。Ca置換量の増加に伴ってLCFOにおける電荷移動転移温度が低下し、25~75%程度の置換量では低温で電荷移動を起こした相と電荷不均化相とに相分離することを見出した。また75%以上の置換量ではCCFOと同様Fe4+が電荷不均化を起こすことが明らかになった。このような複雑な電子相転移は、酸素ホールが高温では八面体サイトのFeと結合して遍歴的に振る舞う一方で、低温において局在化することによって生じると考えられる。すなわち、Laリッチ組成では低温で酸素ホールがCuと強く結合して局在し、Cu3+/Fe3+という価数状態を作り出す。一方でCaリッチ組成では低温で酸素ホールが一つおきのFeと強く結合することで岩塩型のFe3+/Fe5+電荷不均化が起こる。電荷移動相と電荷不均化相が非常に近いエネルギーを持ち、互いに競合しているために中間組成では相分離が見られるものと考えられる。以上のようにこれまで全く異なった現象として捉えられてきた電荷移動と電荷不均化を酸素ホールの低温における局在化挙動として眺めることで、特性の変化を系統的に理解できることが明らかになった。またここで得られた知見は異常高原子価イオンを含む新規機能性材料の設計・開発に今後大いに寄与すると期待できる。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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