研究課題
BCS超伝導体において超伝導を担うクーパー対がフォノンを媒介として生成される事を示したのは同位体効果の発見であるが、高温超伝導銅酸化物におけるクーパー対の生成メカニズムは、発見から四半世紀を経た今でも明らかになっていない。本研究ではCuより大きなスピンを持つNi置換がスピン揺らぎに及ぼす影響を中性子散乱により調べ、平成23年度の研究からは「砂時計型の磁気励起の分散の節にあたるエネルギーEcrossがNi置換と共にTcに比例して小さくなる事」、平成23年度の研究からは「Ni置換は磁気励起の分散全体を変化させる事」を明らかにし、Ni置換は磁性同位体効果と言うべき影響をCuスピンネットワークに与えていることを明らかにした。東日本大震災の為、研究期間を延長して行った平成24年度においては、23年度後半に測定したTOF法中性子散乱データについて、装置分解能の補正を考慮した定量的な解析を進め、反強磁性ゾーン中心付近のスピン揺らぎがNi置換に伴い、「エネルギー方向に分布を持って低エネルギー側にシフトする事」、「砂時計型分散の上向きのスピン波的な分散が急峻になる(スピンの結びつきが固くなる)事」を見出した。これらは、Cuスピンネットワークが局在した大きなNiスピンによってスピン揺らぎが引きずられて遅くなるという描像で定性的に理解できる。反強磁性ゾーン中心近傍のスピン揺らぎの特性エネルギーであるEcrossがTcとともにNi置換により低下するという、これらの発見は、高温超伝導銅酸化物におけるクーパー対の生成メカニズムに反強磁性ゾーン中心近傍のスピン揺らぎが直接的な役割を果たしていることを示す重要な結果である。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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