研究課題
分子性結晶における強電場効果およびスピン依存伝導現象を調べるため、前年度に引き続きサブミクロンスケールの微小電極を用いた伝導測定を行った。結晶表面の劣化を避けるため、FIB加工したメタルマスクを用いた微小電極形成を行った。電極間隔の異なる複数の試料で低温非線形伝導特性を測定し、バルク試料の特性との比較を行った。バルクのtheta-(BEDT-TTF)2CsZn(SCN)4では磁場の方位に依らない大きな磁気抵抗が観測される。微小電極を用いて測定すると、電極間隔を狭くするにつれて磁気抵抗効果が大きく減少することがわかった。この結果は、磁気抵抗が電荷秩序のドメイン境界に存在する局在スピンに起因するという機構と矛盾しない。これらの成果を日本物理学会2011年秋季大会で発表した。また、電荷秩序を示すalpha-(BEDT-TTF)2I3やalpha'-(BEDT-TTF)2IBr2の低温における非線形伝導および誘電特性を詳細に調べた。電荷秩序系theta-(BEDT-TTF)2MZn(SCN)4(M=Cs,Rb)やモット絶縁体kappa-(BEDT-TTF)2Cu[N(CN)2]Clと同様に、束縛電子ホール対のダイナミクスによって面内非線形伝導、誘電特性を説明できた。また、低温における温度に依存しない非線形伝導特性を、量子トンネル効果による電子ホール対の解離として説明した。これらの成果をJ.Phys.Soc-Jpn.誌に発表した。さらに、低温量子トンネル領域でマイクロ波を照射すると、束縛電子ホール対の量子状態を反映した構造が電流電圧特性に現れると予想される。0.5Kまでの低温、260GHzまでのマイクロ波を印加した状態で伝導・誘電特性を測定できるシステムを構築し、電流電圧特性を詳しく調べた。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (3件) 備考 (2件)
Journal of the Physical Society of Japan
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http://samurai.nims.go.jp/YAMAGUCHI_Takahide-j.html
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