研究概要 |
本研究の目的は電界効果トランジスタ(FET)構造に代表されるデバイス構造を用いて,分子性結晶の酸化状態を様々に変化させ,それに伴う磁気状態の変化を電子スピン共鳴(ESR)を用いて観測する事である.当初はフタロシアニン分子を含む有機磁性体を対象とする予定であったが,デバイス構造の作成に適した薄膜単結晶の作成が困難であったため,薄膜単結晶の作成が比較的容易と考えられる, BEDT-TTF系有機伝導体を用いて,デバイス構造の作成を試みた.その結果電荷秩序系有機伝導体α-(BEDT-TTF)_2I_3を用いた試料において,電界効果による伝導度の変調を観測した.また,今回我々が作成したいくつかの試料においては,正負のゲート電圧両方において伝導度が上昇する,両極性の振る舞いを観測した.この結果は過去には報告されていない新規なものである.この成果は既に論文として出版されている.また, FET構造における伝導チャネルに代表される,非常に微小な領域からのESR信号を観測するための近接マイクロ波を用いたESR測定プローブの設計を行った.このような装置はこれまであまり例がなく装置開発の意義は大きい.部品加工業者のトラブルによって部品の納入が大幅に遅れたが,今後組み立ておよびテスト,調整を行う予定である.
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