• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実績報告書

固体における新しい型の準粒子発現の数理およびその量子デザインへの応用

研究課題

研究課題/領域番号 22740248
研究機関群馬大学

研究代表者

守田 佳史  群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10292898)

研究期間 (年度) 2010-04-01 – 2014-03-31
キーワード量子シミュレータ
研究概要

本研究では(従来、素粒子物理学の文脈でのみ議論の対象になっていた)相対論的粒子が、近年グラフェンなどの固体に準粒子として発現することが確認され始めたことに注目した。研究代表者は固体における相対論的準粒子(Dirac/MajoranaFermion)が発現する可能性を、実験にさきがけ基礎的観点から研究を始めており、現在の各論的・発見的視点によるこれらの系でのデバイス開発には限界があり、基礎理論をベースにしたシミュレータによる系統的研究が飛躍のため必要不可欠と考え、研究を推進した。その中で、従来の半古典理論を越え、定量的予言能力をもつ‘量子’シミュレータによる固体デバイスのデザインと、それと連携したデバイス実験/実装を展開することを目指した。私は、相対論的準粒子に注目したデバイスの量子デザインを念頭においた理論・実験の共同研究を既に開始した。現在はラマン分光法を用いたグラフェンの評価法を理論・実験ともにほぼ確立し、既にグラフェン単電子トランジスタの実装に成功し集積回路などの作成の端緒にもついた。グラフェン単電子トランジスタの電子輸送特性と、その準古典理論を基礎にしたシミュレーションの結果は整合的で、理論は予言力をもつことが確認されたが、現在定量的な結果を導くには至らない。今までの理論および実験の準備を基礎に、計算機環境・実験環境の飛躍により、電子輸送特性などを定量的に導く‘量子’シミュレータの開発を目指し、準備も開始した。最終的には、量子力学的少数多体系におけるコヒーレンスや相互作用という基礎物理学的側面をルーツに持ちながらも、量子情報システム・単一電子エレクトロニクスに関する知的資産の形成に至る道筋の端緒につけた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

固体中に発現するDiracFermion・超伝導体に発現するMajoranaFermionなど相対論的準粒子の基礎理論の確立を目指した。既に発現を提案/発表しているいくつかの物質に関してより定量的な実験の提案をおこない事実を確立する方向へ進展があった。当初研究計画では平成22年に基礎理論を構築し、平成23から25年にわたって、実験グループと共同で実装/実験をこころみる予定であったが、予定より早く研究が進展し、新しいグラフェン単電子トランジスタ/世界で初めての磁場誘起単一電子輸送の実験に成功した(プレプリント)。また半古典理論/シミュレータによる定性的予言/解釈にも成功した。この内容はInternational Conference “Smart Materials, Structures and Systems”, Montecatini Terme, Italy, 10-16 June, (2012)における国際会議招待講演をはじめとした場所で発表をおこなっている。対応する理論も一部発表した。より系統的・定量的な研究を展開したい。さらに今後の‘量子’シミュレータの導入のためのインフラを次のステップに格上げする準備も開始した。国内外の実験理論グループとの協力し、研究体制を発展させ、研究に関する議論、論文の打ち合わせを中心に、国際会議などで発表し、多くの研究者と議論し、研究交流を活発に行った。すでにベースとなる計算機環境は整い始めた。今後は、これを基礎により高度な計算機環境を導入し発展する端緒につけた。

今後の研究の推進方策

シミュレータのフィードバックを活用し、この時期までには集積回路などの作成および多様なグラフェンベースの量子デバイスの提案へと発展している予定でもある。また提案する測定系は既存の単一電子輸送測定システムにマイクロ波・ミリ波を発生する装置と高周波を極低温・強磁場環境下の測定プローブに導入し、さらにグラフェン量子ドットデバイスと結合するための共振器系を備えた試料ホルダのデザインを目指す。そして作製した量子ドット・結合量子ドットの持つ単一電荷を利用した量子状態のコヒーレント制御を実現するため、グラフェン系量子ドットの基礎物性と高周波応答による電子輸送ダイナミクスの実験的検証の提案をおこなうことを目指す。とりわけ、結合量子ドット系においては、ふたつの量子ドットのエネルギー順位差に相当する周波数の電磁波に対してのみ電子はトンネルして流れるというシステムである。このような系を我々の量子シミュレータが整合的・定量的に記述できれば系統的な集積化への道が開ける。またそれとは別に、このような実験系が確立すれば、マイクロ波からテラヘルツ領域における電磁波の超高感度・超高分解能検出/量子状態のコヒーレント制御(量子ビット動作)/単電子ロジック回路などの副産物的成果も実現できるはずである。最終的には、量子力学的少数多体系におけるコヒーレンスや相互作用という基礎物理学的側面をルーツに持ちながらも、量子情報システム・単一電子エレクトロニクスに関する知的資産の形成に至ることができると考えている。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Breakdown of the Quantum Hall Regime in a 'Confined' Graphene2013

    • 著者名/発表者名
      Y. Morita
    • 雑誌名

      Advances in Science and Technology

      巻: 77 ページ: 276-279

  • [雑誌論文] Coulomb Blockade Behavior in Nanostructured Graphene with Direct Contacts2013

    • 著者名/発表者名
      S. Moriyama
    • 雑誌名

      Mater. Express

      巻: 3 ページ: 92-96

    • 査読あり
  • [学会発表] Field-induced quantum dots in graphene mesoscopic structures2013

    • 著者名/発表者名
      S. Moriyama
    • 学会等名
      MANA International Symposium
    • 発表場所
      Tsukuba (Japan)
    • 年月日
      20130227-20130301
  • [学会発表] Transport Spectroscopy of Field-induced Quantum Confinement in Graphene2012

    • 著者名/発表者名
      S. Moriyama
    • 学会等名
      SSDM
    • 発表場所
      Kyoto(Japan)
    • 年月日
      20120925-20120927
  • [学会発表] Graphene Nanostructures for Building Blocks of Quantum-dot Based Nanodevices2012

    • 著者名/発表者名
      S. Moriyama
    • 学会等名
      CIMTEC
    • 発表場所
      MontecatiniTerme (Italy)
    • 年月日
      20120610-20120616
    • 招待講演
  • [学会発表] Breakdown of the Quantum Hall Effect in Graphene2012

    • 著者名/発表者名
      Y. Morita
    • 学会等名
      CIMTEC
    • 発表場所
      MontecatiniTerme (Italy)
    • 年月日
      20120610-20120616

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi