電子格子相互作用によってバンドギャップなどのバンド構造が変化することを、第一原理計算を用いて定量的に議論するため、昨年度開発した手法と相補的な手法であるフローズンフォノン法を用いた方法を実装し、ダイヤモンドにおいて2つの手法の比較を行った。その結果、2つの手法の結果がほぼ同じ結果を与えることが分かった。これは、双方の手法に内在する近似などがあまり大きな問題とならず、電子格子相互作用によるバンドギャップの変化が非常に高い信頼性を持って計算可能になったことを意味する。この2つの手法の開発により、今後様々な物質において、バンド構造における電子格子相互作用の効果を系統的に議論する基盤が確立したものと考えている。 一方、細いカーボンナノチューブの電子状態および光学応答についても計算を行った。特に、細いチューブにおいては普通のチューブで従来観測されてきた発光が観測されないことがあることを指摘した。これは、細いチューブにおいて伝導体の底の電子状態が普通のチューブと異なることに起因している。細いチューブは電子格子相互作用が重要になることなどから従来のチューブと異なった応用が考えられており、今後重要となってくることが期待される。本研究は今後の細いチューブの応用に向けて非常に重要な情報となると考えられる。
|