研究課題/領域番号 |
22740253
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
古石 貴裕 福井大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (20373300)
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キーワード | イオン液体 / 水 / 分子シミュレーション |
研究概要 |
イオン液体の性質を調べるための分子動力学シミュレーションプログラムの作成を行った。これまではイオン液体のみのシミュレーションを行ってきたが本研究の目的地を遂行するためには水を添加した状態でのシミュレーションを行う必要がある。この場合、任意の水添加量での系の密度を使用するが、全てのイオン液体での水添加時の密度が実験的に求められているわけではない。従って、シミュレーションでは密度を与えるのではなく常温・常圧での密度が再現される定圧シミュレーションを使用する必要がある。また、イオン液体は陽イオンもしくは陽イオンと陰イオンが有機分子で構成されているため、各イオン対の構成原子数が通常のイオン性液体の原子数に比べ10倍以上多くなることが多い。シミュレーション行って物性値を調べるためにはある程度の統計量を確保する必要があるので、シミュレーション系に含まれるイオン対の数もある程度多く取る必要がある。そのため、系の原子数は単純なイオン性液体に比べ非常に多くなり、計算時間が非常に長くなる。このような系でのシミュレーションを行うためにはプログラムを並列化しPCクラスターと呼ばれる並列計算機で実行しなければならない。そこで、イオン液体の定圧シミュレーションに対応し、並列動作する分子動力学シミュレーションプログラムの開発を行った。分子動力学シミュレーションの主な並列化の手法としては、粒子の個別のCPUに割り当てて計算させる粒子分割法と系の領域を分割して個別のCPUに割り当てて計算させる空間分割法がある。前者はプログラム作成が容易であるが、使用するCPUが増えた場合実行効率が悪くなるので、今回はプログラムの作成が難しい後者の空間分割法の実装を行った。このプログラムでテスト計算を行ったところ実際に使用するCPUが増加した場合でも実行効率を落とさずシミュレーションを実行できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
シミュレーション実行の時間を短縮するために、分子動力学シミュレーションの並列手法に空間分割法を用いることとした。この手法は計算に使用するCPUの数を増やしたときに実行効率が落ちないという利点があるが、並列化に高度な処理が必要であるためプログラムが複雑化し開発に時間がかかった。
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今後の研究の推進方策 |
分子動力学シミュレーションを実行する系に含まれる粒子数が多い場合、計算量が増大し計算時間がかかるという問題点がある。現実的な時間で計算を終わらせるためにシミュレーションプログラムを並列計算機に対応させ、高速な計算を行えるようにしている。今後計算の実行状況をみながら、更なる高速化が必要であれば実施していく予定である。
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