本研究の目的は、(1)十分発達した電磁流体乱流(MHD乱流)の大規模直接数値計算(DNS)データを解析し、乱流の統計理論・情報縮約手法の中核をなす統計的普遍性を検証すること、(2)ウェーブレット解析に基づく情報縮約手法(CVCS手法)を開発することである。最も規範的なMHD乱流の一つである周期境界条件を満足する3次元MHD乱流場に的を絞り研究を実施した。平成22年度に得られた成果の概要を以下に示す。 (A).非等方性MHD乱流の3次構造関数に対する一般化された4/5則の導出及びそのDNSデータを用いた検証を行った。レイノルズ数の増加につれ、3次構造関数が4/5に漸近すること、非等方性の影響が電気伝導性をもたない流体の乱流に比べずっと大きいことなどが分かった。 (B).一様磁場の無いDNSデータ及び、一様磁場がある低磁気レイノルズ数のMHD乱流のDNSデータの直交離散ウェーブレット解析を行った。主要な統計量のスケール依存性を調べた。オイラー加速度がラグランジュ加速度と同程度の間欠性を示すこと、速度場と磁場が同じ方向を向く傾向が、他の組み合わせよりも強いことなどが分かった。 (C).開発したCVCS手法は、DNSの自由度の僅か約6%の自由度を保持するだけで、DNSで得られたエネルギー、渦度のPDFなどの統計量だけでなく秩序構造の場所もよく再現した。 得られた成果により、MHD乱流の普遍性の解明が進み、MHD乱流の適合格子シミュレーション手法はじめとする計算科学的MHD乱流モデルの開発が促進されると期待される。
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