研究課題
本研究の目的は、十分発達した電磁流体乱流(MHD乱流)の大規模直接数値計算(DNS)データを解析し、乱流の統計理論・情報縮約手法の中核をなす統計的普遍性を検証すること、及び、ウェーブレット解析に基づく情報縮約手法(CVCS手法)を開発することである。最も規範的なMHD乱流のひとつである周期境界条件を満足する3次元一様MHD乱流に的を絞り研究を実施した。平成23年度に得られた成果の概要を以下に示す。(A).前年度に導出した一般化されたカルマン・ハワース方程式に基づいて、3次構造関数に対する4/5則の検証を行った。慣性小領域における3次構造関数の近似関数を解析的に求めた。その近似関数がDNSの結果とよく一致することを確認した。(B).前年度に開発した擬アダプティブCVCS手法の決定論的な予測可能性を評価した。DNSとCVCSとの誤差場の時間発展を調べた。その結果、電気伝導性を持たない通常の流体乱流(以下HD乱流と呼ぶ)に比べMHD乱流の初期値敏感さが弱いことが示唆された。また、MHD乱流の散逸スケールを代表する長さスケールの30倍程度より大きい長さスケールの場が渦度シート、電流密度シートの場所を決めるのに主要な役割を果たしていることが分かった。(C).CVCS手法の完全アダプティブ化の前段階として、3次元非圧縮HD乱流に対するウェーブレットに基づいた完全アダプティブシミュレーション手法の開発も行った。使用メモリの削減に成功した。得られた成果により、MHD乱流の普遍性の解明が進み、MHD乱流の完全アダプティブシミュレーション手法はじめとする計算科学的MHD乱流モデルの開発が促進されると期待される。
2: おおむね順調に進展している
当初計画した3次元一様MHD乱流の4/5則の検証、ウェーブレット解析を用いた3次元一様MHD乱流の間欠性の研究、及び、ウェーブレット解析を応用した情報縮約手法である擬アダプティプCVCS手法の開発及びその検証が3次元一様MHD乱流に対して完了したから。また、完全アダプティプ手法の開発にも着手できた。さらに、間欠性の研究、CVCS手法の開発及びその検証については、査読付き学術誌に採択された。
引き続きスーパーコンピュータを駆使して3次元一様MHD乱流の普遍性の研究を行うと共に、ウェーブレット解析を応用した情報縮約手法の発展を行う。前者では、特に初期条件敏感さについて検討する。後者においては、海外の共同研究者であるSchneider,Farge両博士との連携をより密に行い、完全アダプティブ手法の開発を進める。
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