本研究提案は、第一原理電子状態計算に基づき熱統計力学的手法を用いて、合金やDMSに代表される混晶半導体中での自己組織化現象の起源を明らかにすることを目的とする。さらに得られた知見を総合して、生成したナノ磁性体のサイズ、密度や形状を制御する方法を提案し、自己組織化を利用した半導体スピントロニクスデバイスのデザインへの布石を与える。 H22年度は、Cu-Ni合金で観測されている巨大ペルチェ効果の起源を解明するためにこの系でのナノ構造の自己組織化をKKR-CPA法およびモンテカルロ法を用いてシミュレートした。その結果Cu-Niは相分離を起こす系であり、結晶成長条件を調整することで擬一次元的なナノ構造が自己組織化により形成されうることがわかった。この特殊な形状により状態密度に鋭いピークが現れ巨大ペルチェ効果の起源となっている可能性がある。 次年度は、シミュレーションの高精度化および半導体混晶系への応用を考えてクラスター変分法を用いた自己組織化シミュレーションを行う。そのためにクラスター相関関数の計算サブルーチンを作成し、またカルコパイライト半導体系についての予備計算としてKKR-CPA法による電子状態計算を行った。この計算については高効率太陽電池材料のマテリアルデザイン関連の研究として一連の論文発表を行った。
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