本研究提案は、第一原理電子状態計算に基づき熱統計学的手法を用いて、合金やDMSに代表される混晶反動体中での自己組織化現象の起源を明らかにすることを目的とする。さらに得られた知見を総合して、生成したナノ磁性体のサイズ、密度や形状を制御する方法を考案し、自己組織を利用した半導体スピントロニクスデバイスのデザインへの布石を与える。 H23年度は、自己組織化の第一原理シミュレーションの密度化に向けてクラスター展開法の計算機コード開発を行った。多数(~50個)のスーパーセルについて全エネルギーを計算しそれらをもとにクラスター相互作用(~10個程度)を決定する。得られた相互作用をもとにモンテカルロ方により自己組織化をシミュレートする。最適なクラスターは遺伝的アルゴニズムにより決定する。独立なスーパーセルはクラスター相関関数の違いから検出できるが、このサブルーチンについては現在、群論を用いた方法を検討している。 クラスター展開の方法では不純物周りの格子緩和の影響を自然に取り入れることができるため、前年度のKKR-CPO法ベースの計算に比べてより精密な計算が可能となった。開発したコードでAlCu合金でのGPゾーンの形成を再現することができた。またカルコパイトライト半導体系についての計算を行った結果、格子緩和の影響によりスピノダル温度がKKR-CPA法ベースの計算では2倍程度過大評価していることがわかった。開発したコードは凡用化のために後少し整備が必要であるが、計算機マテリアルデザインの実行に非常に有用なものである。本研究で開発したコードををもちいて、磁性半導体などの省エネルギースピントロニクス材料や高効率エネルギー変換材料(例えば高効率太陽電池材料)に適用しエネルギー関連材料の開発にデザインの立場からの寄与が可能である。
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