マイクロビーム照射に関する技術開発:照射施設内の顕微鏡サンプルステージにピエゾ駆動XYZステージを導入した。これによりサブミクロン精度での移動および位置設定が可能となった。初年度末現在、細胞のトラッキングを全自動で行うソフトウェアを開発中である。加速器に付随したビームラインは、一般に、物理および材料系の実験や測定を想定しており、細胞にストレスなく培養することには不向きである。しかしながら、本研究では、照射以外のストレスを排除しなければ、照射による効果を特定することが困難になる。従って、本研究費により照射施設内に生物学実験と同レベルで細胞を操作および培養ができる環境を構築し、照射直後から細胞への余分なストレスを低減できるようにした。さらに、テーパー型フタ付きガラスキャピラリー(マイクロイオンビームを生成し、液相への照射を可能にする)については、フタのサイズやフタの品質を大幅に向上させた。 科学的成果:上記の装置を使って、一つ一つのヒトがん細胞の細胞質および核を逐次狙い撃ちし、その細胞の応答を調べる予備試験を行った(2MeVヘリウムイオンビーム使用)。 これらの実験は、DNAの修復中のたんぱく質の役割を説明できると期待されており、次年度も継続して行われる。一方、次年度へ向けて、国内外のいくつかグループとの共同研究を検討中であり、細胞系あるいは組織への照射が見込まれている。今年度は、技術開発及び予備段階での結果を6つの会議にて発表した(うち、2つは国際会議での招待講演)。
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