本年度は生細胞のマイクロメーター領域を照射するための全自動ステージを開発した。用いたPIジャパン製のステージはピエゾモーターにより三次元駆動が可能で、XY方向のストロークはそれぞれ25mm、Z方向には100μmである。また、精度は全方向においてμm以下である。これにより、培養皿上の全ての領域において狙った細胞を正確に照射することが可能である。このステージは照射チェンバー上で我々の設計したアダプタを介して光学顕微鏡と連結されている。また、新たにオンステージの培養器を導入し、このステージ上で細胞培養が可能となっている。このステージはLabViewソフトウェアによって制御し、照射後の細胞を自動的に追跡可能とした。自作ソフトウェアであるため、実験上の要求に応じて改良が容易である。例として、自動的に個々の細胞を判別するアルゴリズムや、細胞全体もしくは照射領域を三次元的に再構成するためのいわゆる"Z-スタック"像を取得するための機能を取り入れることが出来た。本システムは初期テストにおいて問題無く動作し、三次元方向にμm以下の精度で駆動可能であった。人間の生細胞をこのオンステージ培養器上で数日にわたって培養したところ、全期間において細胞は健全であり、細胞周期は20時間以下であることが確認された。これは細胞周期が50時間程度であった以前のシステムに比べて画期的な進歩であり、以前のシステムは細胞を健全に保つことが出来ていなかったことが示唆される。固定された細胞を用いた初期テストでは、細胞内のおよそ1μm幅の中心体に対して正確に照射することが可能であった。このことにより、数立方μmの微小体積をターゲットとすることが可能であることが示された。この改善されたシステムを用いることにより、細胞に害を与えることなく細胞小器官の正確な照射ならびに照射された細胞の数日間にわたる追跡が可能となる。
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