研究課題
本研究では剪断流動下の高分子系の示す応答を分子運動の視点から解析するための理論の開発を行ってきた。昨年度までの研究成果から、剪断流動下での弱くからみあった高分子鎖の運動は非等方的なものとなること、水溶液中の会合性テレケリックポリマーも非等方的な会合運動を示していることが示唆された。本年度はこれらの結果を受け、理論モデルの改良および実験データのより詳細な解析を試みた。まず、実験データの解析として、会合性テレケリックポリマー溶液の種々のレオロジー特性の解析を試みた。特に、レオロジー測定でみられる強い非線形性はテレケリックポリマーの形成する過渡的ネットワーク構造の違いに起因していると考え、テレケリックポリマー濃度の変化によるネットワーク構造の変化とその結果生じるレオロジー特性の濃度依存性を解析した。その結果、テレケリックポリマーの非等方的会合ダイナミクスを支持する結果が得られた。また、これまでに開発してきた 1 本鎖モデルでは剪断流動下での非等方的運動の発現機構を十分に理解することはできないと考え、多数鎖モデルの開発を行った。多数鎖モデルは 1 本鎖モデルと異なり、流動下での高分子鎖同士の相関を直接的に取り扱えるため、非等方的な運動性を事前に仮定する必要がない。本研究ではからみあった高分子系の動的性質をよく再現することの出来る 1 本鎖スリップスプリングモデルを多数鎖に拡張した。現在のところまだ流動下での高分子鎖の振る舞いについては検証を行っている最中であるが、有用な情報を得られるものと期待される。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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