研究概要 |
高分子溶液やコロイド溶液などは,巨大分子である高分子やコ白イド粒子が,小さな分子からなる溶媒に分散した系であり,典型的な複雑流体である,このような溶液のレオロジー(シアシニング/シックニング,粘弾性など)は分散粒子間の相互作用に起因する.従って,分散系のマクロな流動を理解するには,個々の粒子間の適切な相互作用に基づいて解析することが本質的に必要である. 分散系は巨大分子と小さな溶媒分子が相互作用する典型的なマルチスケール系である.分散系のスケールでは,遅い流体力学相互作用と速い熱ゆらぎの両方が非平衡ダイナミクスを支配するつまり,分散粒子間の相互作用は,溶媒の運動によって決まっている.従って溶媒の運動を適切に考慮することが必要となる.本課題では,このような時間スケール分離が容易ではない系のダイナミクスを調べるための直接数値計算の開発を行った。 溶媒の集団運動に起因する流体力学相互作用は,Navier--Stokes方程式と分散粒子の連成問題を,独自に開発したSmoothed Profile法によって考慮した.一方,溶媒の速い運動である熱ゆらぎは,.溶媒流動にマルコフなランダム応力を,溶媒の揺動散逸関係を満たすように加えることで解いた.この定式化は,過去に格子Boltzmann法で試みられているが,分散粒子の運動学的温度の誤差が大きくなる問題があった.Smoothed Profile法を用いた本方法では,分散粒子の運動学的温度を定量的に解くことに成功した.高分子,コロイド,タンパク質などの複雑流体のメソスケールの非平衡ダイナミクスにおいては,熱ゆらぎと他の相互作用の競合が重要である.開発した方法は,さまざまな分散系の非平衡ダイナミクスの解明に応用可能である.
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