研究概要 |
平成22年度は、バルクにおけるcatenated-ringとknotted-ringの拡がりをモンテカルロシミュレーションで求め、trivial-ring(最も単純な環状高分子)と比較した。セグメント数Nが小さな領域では、catenatedは対のリングの存在によってtrivialよりもやや拡がっており、knottedは分子内の結び目の効果で収縮していることが分かった。一方、Nが大きな領域では、catenated, knottedともにtriviarlと同じ拡がりを持ち、フローリの臨界指数nuはtrivialと同じ1/3に達することがわかり、trivialと同様に、周囲の分子鎖からスクイーズ効果を受けていることが分かった.次にcatenatedの対の分子の重心間距離Lを求めた。Nが小さな領域ではNの増加に従ってLは増加するが、N>1024の領域でLの増加が抑制され一定の値をとることが観測された。これは、対のリング間で互いにスクイーズするのではなく、「一対のcatenated-ring全体」に対して周囲からスクイーズしていることを明らかにした(三件で口頭発表、論文投稿準備中)。また、環状ポリスチレンのバルクにおける拡がりを中性子散乱実験で求められている文献値とシミュレーションで求めた回転半径がよく一致することを論文報告した(Prog.Theor.Phys.Suppl.)。 上記と並行してθ状態(希薄溶液)におけるtrivial-ringの拡がりを検討し、trivial-ringのθ温唐がlinear分子よりも低いことがシミュレーションから分かった。これは、実験、理論予測ともよく一致する結果である。(22年度末でデータ解析の最終段階で、論文投稿準備中。) 上記の2件成果は、研究計画調書で研究開発を提した「FCC格子を元にしたシミュレータ」を利用した。よってより計算効率の高いアルゴリズムの提案/開発も順調に進行し、その成果が応用され始めたと言えよう。
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