研究概要 |
木星系衛星ガニメデの金属核形成過程の解明に向けて,まずガニメデと同サイズの衛星カリストとの比較の観点で研究を行った.ガニメデは金属核とそれ起源の固有磁場を持った明瞭な内部分化状態にあるのに対し,カリストは金属核を持たず固有磁場も無い.この分化史の違いを説明するべく,含水鉱物の脱水過程の有無に着目した理論的分析を行った.この数値解析に必要な計算機環境の構築と,既存の熱構造進化プログラムの改良を行い,予想される様々な初期状態と物性値を体系的に与えた数値シミュレーションを実行した.ガニメデはカリストよりも岩石量(即ち放射性熱源量)が2~3割程度多いことによって初期の(含水鉱物からなる)岩石+金属混合核温度が脱水温度に達し,レオロジーの硬化(急激な熱輸送率の低下)に伴って温度が上昇.15億年後にはガニメデの初期混合核温度が金属成分の融点に達して金属と岩石の分離が発生し,金属核形成が行われることが分かった.一方でカリストは熱源量の少なさから初期核温度が含水鉱物の脱水温度に達せず,金属と岩石は未分離のまま現在に至ることも分かった.初期核を構成する岩石が含水化していない場合では,その硬いレオロジー(低い熱輸送率)から両衛星ともに初期混合核温度が金属成分の融点に達してしまい,金属核形成が起こってしまうことも分かった.以上を総合し,ガニメデとカリストが持つ明瞭な内部分化状態の違いは,放射性熱源量の違いと含水鉱物の脱水化という2つの要素によって作り出される可能性があると結論づけた.
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