地球惑星内部物質の物性を調べる一つのツールとして、高圧発生手法である静的・動的圧縮法のうち、地球中心部の状態をも生成可能であるレーザー衝撃圧縮法に着目して、大型レーザー装置を用いた衝撃変成手法を開発することを目的として研究を行った。地球惑星内部物質を使ったレーザー誘起衝撃波による衝撃変成に関する研究は国際的にもほとんど例がなく、地球惑星内部状態にした試料を回収することはもちろんのこと、レーザー衝撃変成の妥当性を評価した例はないので、この手法が確立されれば地球惑星科学研究だけでなく物質科学研究等への応用も期待できる。 本年度は、地球内部や隕石の主要鉱物であるオリビンを使って、レーザー衝撃変成実験を行った。レーザーを試料に直接照射すると高圧状態になった試料が外側に噴出してしまうので、噴出物の回収に回収ボールなどを使用したが完全な回収は出来なかった。そこで、オリビン表面に金属板(アルミあるいはチタン)を配置し、試料の噴出を抑制した。これにより高温高圧状態を経験したオリビン試料が噴出してしまうことなく、試料を100%回収することに成功した。また、レーザー照射によって金属板に出来た穴は、阻石衝突で出来るクレーターに類似しており、レーザーのエネルギーと金属板に開いた穴の径との関係は、飛翔体(弾丸)を使った衝突模擬実験から得られる結果と一致していることがわかった。このことから、レーザー照射によって発生する衝撃波が阻石衝突現象を模擬し得る可能性を示唆した。回収したオリビン試料は断面を切り出して、衝撃波伝播による変成状態を光学観察(光学顕微鏡、ラマン分光観察)あるいは電子顕微鏡観察を順次行っている段階であり、地球内部で見られるようなオリビンの高圧相はまだ見つけられていないのが現状である。今後、より微小領域の構造分析が可能な透過型電子顕微鏡観察を行う予定である。
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