地球質量程度の惑星が、原始惑星系ガス円盤内でどのように動くかはまだしっかりとわかっていない。本研究では、輻射輸送による熱の散逸を考慮してガス円盤と惑星との重力相互作用を調査した。まず、惑星重力とダスト輻射の影響を含んだ流体計算コードを開発した。それを使い、面密度分布と温度分布およびダストによる輻射効率を色々と変えて、惑星の移動速度の変化を明らかにした。その結果、次のことがわかった。1)輻射効率を固定した場合:円盤のエントロピー分布のベキが小さくなると、惑星の移動速度は大きくなる(正の速度は中心星から惑星が遠ざかることを意味する)。断熱円盤(ダスト輻射がまったくない円盤モデル)においてエントロピー分布のベキが-0.4あたりで惑星の移動速度が正から負になる。そのため、-0.4よりも大きいベキを持つ円盤すべてにおいて惑星は内側へ落下する。2)円盤構造を固定した場合:輻射効率が大きくなると惑星の移動速度は減少する。3)惑星質量が20倍の地球質量以下の範囲であれば、惑星移動速度に対する惑星質量の依存性は非常に弱い。これらの結果を、観測で支持されている円盤構造に適用すると、幅射効率の減少とともに惑星の移動速度は負から正に変化する。ダストの輻射効率はダストサイズやその濃度などに依存する。地球質量程度の比較的大きな惑星ができている後期の惑星形成過程では、比較的大きなダストが少量残っているだけだと考えられる。これは輻射効率が小さい状況に対応している。そのため、我々の結果は、従来の研究で指摘している「地球質量程度の惑星は円盤ガスの寿命に比べて短時間で中心星に落ちて、円盤内に残らない」という問題を緩和することを示唆している。上記の計算は2D計算の結果であるが、併せて計算コードの3Dへの拡張も今年度行い、コードの信頼性をチェックしている。
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