今年度の研究は、光学的に厚い円盤内でのType I惑星移動に注目して、研究を進めてきた。光学的に厚い円盤では、スノーラインを境にして温度分布のベキが変化する。これは、ダストの光学的特性がスノーラインで変わるためである。惑星移動に関する近年の研究によると、惑星移動の速度と方向は温度分布と密接に関係していることが指摘されている。この惑星移動の依存性を光学的に厚い円盤に適用すると、スノーラインに惑星が集まるような運動が起きると予想される、すなわち、スノーラインよりも内側では惑星は外向きに動き、スノーラインよりも外側では内向きに動くという運動である。ただし、過去の研究では円盤は非粘性円盤であると仮定しているため、光学的に厚い円盤のように乱流粘性がある場合でもこの結果が常に成り立つかどうかはわからない。 そこで、本研究では粘性と惑星移動の関係を数値計算で定量的に検証して、どのような場合にスノーラインに惑星が集まるモードになるのかを明らかにした。惑星移動に大きく影響する要因の一つは、惑星周りのガス密度分布である。粘性散逸がない場合、惑星の極近傍にガス密度の高い領域が出現し、ここから惑星を外に動かす力が生じることがわかっている。しかし、本研究からガスが惑星と会合して離れるタイムスケールよりも粘性散逸のタイムスケールが短いと、ガス密度の高い領域がならされ、密度が増えず、内向きの惑星移動になることがわかった。ここで調べた粘性と惑星移動の関係を実際の円盤のパラメータに適用すると、粘性が観測されている原始惑星系円盤の粘性の推定値よりも大きい時、スノーラインの内側にある惑星は内向きに移動し、スノーラインに惑星が集まらなくなることがわかった。一方、観測されている粘性の推定値よりも小さい円盤では、スノーライン付近に原始惑星が集まってさらに成長できるモードが起こり得る可能性を本研究は示唆している。
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