研究課題/領域番号 |
22740297
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
市川 浩樹 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, グローバルCOE研究員 (50570503)
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キーワード | 固体地球物理学 / 流体 |
研究概要 |
今年度も引き続き多相流の数値計算コードの作成を行った。このコードは固体地球科学でよく用いられているオイラー的な手法ではなく、粒子法に基づいている。本研究で開発される粒子法による粘弾性流体のレオロジーを取り扱える多相流コードには様々な適用例が考えられる。オイラー的な計算法では計算が困難であるが、粒子法では比較的扱いやすい問題として、例えば、マグマの中の気泡の成長や、地球の中心核の形成過程のシミュレーションなどがある。これまでのオイラー的な手法では、必然的に相境界に非物理的である数値的な拡散が生じてしまうが、粒子法を使うことにより、相境界の数値拡散を実質的にゼロにすることができ、相境界をシャープに保ちながら長時間の計算をすることができる。従って、粒子法では気泡や液滴の合体や成長を精度良く取り扱うことができる。前年度までに開発した、表面張力や慣性力、粘性力を含む一般的な多相流体系を取り扱える粒子法のコードを用いて、粘性力が支配的な系であるマグマオーシャン内の数100μmの微少な鉄の液滴の衝突、合体の計算を試みたが、現在、計算が不安定になっている。1mm程度の液滴までは安定に計算ができているが、より小さい液滴では、粘性力と表面張力の相互作用により生じた不安定性が発達してしまう。その不安定性に対しては、フォン・ノイマンの人工粘性を用いてある程度抑えることに成功しているが、妥当な計算精度で計算するためには、なんらかの手法を用いる必要がある。最終目的のマグマの中の気泡の問題も、気泡自体の慣性がほとんど無く、衝突や合体に対しては、粘性力が支配的になるので、粘性が支配的な場合に安定に計算できるように現在改良している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2011年度中に数値計算コードを仕上げる予定であったが、そのコードを用いた数値計算で不安定性が生じており、その不安定性を抑えることが現時点で成功していないため。
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今後の研究の推進方策 |
この数値計算コードを粘性力が支配的であるマグマオーシャン内の数100μmの鉄の液滴の合体成長の問題を数値的に安定に計算できるように改良する。現時点では、小さい液滴の合体を計算するときに、計算が不安定になるが、計算スキームの改良などで対応する。そして、引き続き、気泡の合体を数値計算で再現し、火山のマグマを模した数値計算を行う。気泡核形成の空間的な分布(不均一か均一か〉を調節し、多数のシミュレーションを行うことにより、気泡核形成分布と脱ガス効率を支配する気相連結度の時間発展との関係を明らかにする。
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