研究概要 |
本研究の目的は,精緻なダストアグリゲイトの衝突および圧縮の数値シミュレーションによって,ダストの衝突合体成長の可能性を室内実験結果とも比較しながら検討し,ダストの成長可能性と密度構造進化過程を解明することでダストから微惑星への成長進化モデルを構築することである.ダスト成長の大きな問題点の一つに,低速度衝突においてアグリゲイトが跳ね返ってそれ以上成長不可能というものがある.これは室内実験の結果から示唆されているが,数値シミュレーションでその跳ね返り条件を明らかにする必要がある.平成22年度は,主として跳ね返り条件の解明のための衝突シミュレーションを行いその結果を論文としてまとめた.アグリゲイトが跳ね返るためにはエネルギー散逸を抑える仕組みが必要となる.アグリゲイトの衝突においては,粒子間の転がりやスライドなど粒子がある程度自由に動くことによってエネルギーが散逸される.仮説としては,「配位数」が十分多い,つまり一つの粒子に多くの粒子が付着していれば粒子が自由に動けずエネルギー散逸が不十分となり,アグリゲイトが跳ね返るのではないか,と考えられる.数値シミュレーションの結果,物質・構造・衝突速度によらず,配位数が6以上であればアグリゲイトは跳ね返ることが明らかにされた.さらに衝突の結果ダストアグリゲイトは配位数が4以下にしかなりえないことが明らかになり,得られた跳ね返り条件からダストは原始惑星系円盤内では跳ね返ることなく合体成長可能であることが示唆された.
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