研究概要 |
本研究の目的は,精緻なダストアグリゲイトの衝突および圧縮の数値シミュレーションによって,ダストの衝突合体成長の可能性を室内実験結果とも比較しながら検討し,ダストの成長可能性と密度構造進化過程を解明することでダストから微惑星への成長進化モデルを構築することである.平成23年度は,主として質量比の異なるアグリゲイト同士の衝突シミュレーションと,サイズ分布を持った粒子からなるアグリゲイト同士の衝突シミュレーションを行い,原始惑星系円盤内でのダスト成長・微惑星形成の可能性と構造進化過程について知見が得られた. まず,数百から数十万個の氷粒子からなるBPCA構造のアグリゲイトを用意し,その質量比を1:1から1:64まで振って衝突シミュレーションを行うことで質量比の効果を調べた.結果として,質量比がつくことでアグリゲイトは効率よく付着・成長することが可能であるが,成長臨界衝突速度については等質量衝突に比べて明瞭に上昇することにはならないことが分かった.また,密度構造も衝突地点付近が局所的に圧縮されるが全体としては圧縮されないことが分かった.次に,観測されている星間ダストの冪分布(冪の値が-3.5の冪分布)に従って粒子サイズ分布を与えたアグリゲイトを用意し,粒子数も振ってそれらの衝突シミュレーションを行い,粒子サイズ分布の影響を調べた.結果として,サイズ分布を付けたことでよりアグリゲイトは付着成長しやすくなり臨界成長速度も上昇するという傾向が見られた.これは小さな粒子が多数存在することでアグリゲイトの強度が増したことが原因と考えられる.さらに,衝突によって生じる多数の破片について調べたところ,もとのアグリゲイトに比べて大きな粒子の占める割合が高いことが分かり,ダストの構造進化過程と観測への示唆が得られるに至った.
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