研究概要 |
小惑星探査機はやぶさの観測データから、小惑星イトカワのような500mサイズの小さな天体表面にも多くの衝突破片(岩塊)によって覆われていることが明らかになった。しかしながら、低重力の小惑星が、なぜ多くの破片を捕獲、保持できたのか分かっていない。そこで本研究では、観測された小惑星の空隙率が高いことに注目し、小惑星を模擬した多孔質物質に対する衝突破壊実験を行うことで、飛び出す破片のサイズ、速度の空隙率依存性を詳細に調べることを目的とした。実験はJAXA宇宙科学研究所が所有する2段式軽ガス銃を用いて行った。標的には豊浦標準砂を少量のセメントと水で固めた大きさ数cm-数10cm程度の人工物体(圧縮強度3MPa)を用い、弾丸には直径7mmのナイロン球を用いて、衝突速度2-6km/sで衝突実験を行った。高速度カメラは標的の側面と上面に設置し共に1秒当たり数千コマの割合で2方向から撮影を行った。現在、得られた画像データから破片の大きさ、速度の測定の解析を行っている。 当該年度では、速度解析に並行して、衝突実験で得られた破片形状の3軸比を調べた。衝突破壊破壊における破片の形状の分布は、実験条件に依らず特徴的でかつ普遍的な分布になっていることが知られている。それは破片の長軸a:中間軸b:短軸cの比が平均で2:√<2>:1になっていることである。また最近の研究で、この法則は大きさ200m以下の高速度回転の小惑星の形状、小惑星エロスの岩塊(一部)の形状でも成り立っており、小惑星イトカワの岩塊でも成り立っていることが示唆されている(Michikami et al., 2010)。しかしながら、過去の研究においては、玄武岩や花崗岩など強度が強い標的に対する衝突実験が主で、強度の弱い多孔質物質の破片の形状分布を調べる実験的研究は行われていなかった。そこで、本実験で調べたところ、強度の弱い多孔質物質でも普遍的な破片形状分布が成り立っていることが分かった。以上の知見は、より小さな粒子、はやぶさサンプル粒子の研究にも役立てることができた。
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