研究課題/領域番号 |
22740303
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
上野 洋路 北海道大学, 大学院・水産科学研究院, 助教 (90421875)
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キーワード | 北太平洋亜寒帯域 / 海洋中規模渦 / 海洋生物生産 |
研究概要 |
昨年度に引き続き、衛星海面高度データ、北海道大学水産学部附属練習船おしょろ丸・学術研究船白鳳丸による海洋観測データ、Argoフロートデータを用いて、キーナイ渦の伝播特性および変質過程を調べた。キーナイ渦は、北太平洋東部亜寒帯域北岸に位置するキーナイ半島南方で形成され、アラスカンストリームに沿って西方に伝播する海洋中規模高気圧性渦のことである。本年度は、解析結果を国際学術誌Journal of Geophysical Researchに投稿、レビュアーからの指摘に沿って衛星海面高度データ・Argoデータを用いた追加解析を行い、以下の結果を得た。 キーナイ渦は形成2年後に2つに分裂することはすでに明らかになっていたが、3年後に両者が互いに近づいた際に渦中心付近の水塊が大きく変質したことが新たに分かった。さらに、この接近の際に渦の片方が外洋域へ放出されており、渦・渦相互作用が、渦の経路、水塊変質に大きな影響を与えたことが示された。また、解析期間を延長することにより、キーナイ渦の形成から消滅までの特性の変化を明らかにすることに成功した。本年度はさらに、衛星海面高度計データ・衛星クロロフィルデータを用いることにより、北太平洋亜寒帯域海洋中規模渦の生物生産に与える影響を統計的に評価した。その結果、大陸棚端から200km程度までの海域で特に渦によるクロロフィル濃度の増大が見られることが明らかになり、渦の影響は海域によって大きく異なることが分かった。また、本研究で得られた海洋中規模渦の情報を応用し、北太平洋亜寒帯域に設置したトラップで得られた放散虫の増減が海洋中規模渦の接近と関係していることを示した。この結果はJournal of Geophysical Researchに受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
キーナイ渦の論文の査読結果が帰ってくるまで半年程度の時間がかかり、今年度中の受理を得ることができなかった。しかし、本研究で得られた成果を応用した渦と放散虫の関係に関する論文の投稿・改訂・受理を年度内に行うことができたのは予想以上の成果であった。
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今後の研究の推進方策 |
キーナイ渦の論文が早期に受理されるよう、改訂をしっかりと行いたい。また、渦と生物生産の統計的な解析をさらに進め、学会発表、論文投稿を行いたい。
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