研究概要 |
平成24年度は昨年度までに開発を行ってきた二次元モデルを用い、初期火星の温度圧力条件の下で, 雲粒の落下と浮力への荷重効果を考慮した二酸化炭素雲対流の計算を行った. 具体的には臨界飽和比と凝結核数密度をパラメータとし, これらの組み合わせによって流れ場と二酸化炭素雲の分布がどのように変化するかを調べた。大気の放射過程は陽に計算せず, 赤外放射を想定した水平一様な冷却として与える. 冷却率の大きさは過去の鉛直一次元モデル計算の結果を参考にして与える. 臨界飽和比を 1.0 とした場合, 凝結高度より上空にほぼ水平一様な雲層が準定常的に存在する状態が得られた. 雲層内の鉛直流は凝結高度より下と比べると小さく, 最大で 0.5 m/s である. これらの特徴は凝結核数密度を変えても変わらない. 臨界飽和比が 1.35 の場合, 雲の分布は凝結核数密度によって変化する. 凝結核数密度を小さくすると, 凝結が生じる期間と凝結が生じない期間が交互に出現するようになり, 凝結期には厚い雲とともに 2~3 m/s の鉛直流が生じる. 非凝結期には, 雲密度が閾値未満である水平一様な雲層が存在し, そこでの鉛直流は最大で 0.5 m/s である. 非凝結期が継続する時間スケールは, 系全体の平均温度分布が飽和比 1.0 で決まる分布から飽和比 1.35 で決まる分布へ冷却される時間によって概ね見積もることができる. 以上より, 大気主成分が凝結する系においては, 臨界飽和比と凝結核数密度の値によって雲対流の時空間構造は大きく異なり, 時間的に雲や流れ場があまり変動しない準定常解と, 凝結期と非凝結期を交互に繰り返す準周期的な解が存在することが分かった.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題を今後進める上で最も重要な問題となるのは, 雲と放射の相互作用を対流モデルにどのように考慮するか, である. 先行研究で用いられた放射モデルは対流モデルに組み込むには計算効率が良くないので, 何らかの簡略化が必要になる. その方法については, 大気循環モデルと大気放射モデルに造詣の深い北海道大学, および神戸大学の惑星大気研究者に技術提供を依頼し, 検討を行う予定である.
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