研究概要 |
平成25年度は, 昨年度までに行ってきた初期火星的な温度圧力条件の下での大気主成分の凝結をともなう対流の数値計算データの解析および補助的なパラメタ実験を行い, 数値計算によって得られた流れ場と雲分布の構造についての考察を行った. 過飽和が許容される場合、凝結高度より上の領域では内部重力波が卓越し, これに伴う鉛直流に対応して波状の雲が生じる. 波状の雲は継続的に生成されるため、雲密度の平均的な鉛直分布はほぼ定常となる. その分布は凝結高度付近にピークを持ち高さとともに指数的に減少するようなものであり, 凝結高度付近では氷静的エネルギーの保存性から, それより上空では放射冷却にともなう雲の生成と重力沈降による雲の消滅とのつりあいによって概ね説明される. これらの雲の分布に関する特徴は凝結核数混合比には依存しない. 過飽和が許容される場合, 凝結は準周期的なイベントとして生じる. 凝結が生じない期間の流れ場は過飽和が許容されない場合と同様の構造を持つ. 凝結イベントは凝結高度より下層の乾燥対流に伴う上昇流が凝結高度を超えて貫入した領域での雲の発生で始まる. その後, 雲は鉛直上向きに広がって行く. このとき生じる雲濃度は過飽和が許容されない場合に比べて大きい. 強い上昇流は雲頂付近にのみ存在し, 雲層全体を貫くような上昇流は生じない. 凝結核数混合比を大きくすると準周期的な凝結イベントは生じなくなり, 流れ場と雲分布の特徴は過飽和を許容しない場合の結果と似たもとのなる. 一方で凝結核数混合比を小さくすると, 凝結は準周期的なイベントとして生じるものの, 凝結層内での雲は鉛直下向きに広がるようになる. 凝結が準周期的なイベントとして生じるかどうかは, 凝結層内における雲粒の落下時間と, 凝結層内の温度が臨界過飽和に達するまでの冷却時間との大小関係に依存する.
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