研究課題/領域番号 |
22740306
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
藤原 正智 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 准教授 (00360941)
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キーワード | 気候 / 観測 / 水蒸気 / 高層気象 / センサー |
研究概要 |
本研究は地表から成層圏の水蒸気を高精度に測定できるラジオゾンデ用の鏡面冷却式露点霜点計を開発することを目的とし、昨年度までに試作機を製作・飛揚試験した。本年度は、昨年度に明らかとなった課題を解決するため、次の内容に取り組んだ。(1)測定・制御回路のプリント基板化、(2)制御プログラムの改良、(2)測定空気取り込み用の通風筒内の流量測定、(4)装置構成(通風筒の形状)や電源容量の再検討、(5)ペルチェ素子ヒートシンクの冷却効率の向上、(6)PID制御パラメータの再調整、の6点である。 その後、当初計画の通り、札幌、守谷、インドネシアで複数回の飛揚試験を実施した。インドネシアでは、冷媒冷却方式の鏡面冷却式露点計CFHとの同時比較測定を行った。これらの結果、開発中のセンサは地表から成層圏の水蒸気を測定する能力を有することが確認できた。しかし、同時に上部対流圏・下部成層圏のPID制御パラメータの更なる調整が必要であることが明らかになった。 これまでの室内実験やラジオゾンデ観測から、鏡面冷却式露点計の応答性や安定性は鏡面上に生じる露や霜の形状にも依存することがわかった。これらを定量的に理解するため、露点温度測定時の鏡面上の凝結物の撮影実験に取り組み始めた。 また、ラジオゾンデRS-06Gの高分子膜湿度計の相対湿度測定について、鏡面冷却式露点計との同時比較測定の結果から相対湿度測定に系統的な誤差が生じている事が明らかとなった。RS-06Gは現業用としても使用されており、これによって測定された高層気象データはある一定の系統的誤差を持っている可能性がある。鏡面冷却式露点計を用いて、RS-06Gの相対湿度測定の評価試験を実施した。 さらに、鏡面冷却式露点計のみで測定することができない雲中の水分量を測定するため、雲粒の形状や密度を測定する雲粒子カウンタの開発にも着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画書に記載した飛揚試験を実施することができた。この結果明らかとなった課題を解決することで、開発中のセンサで地表から下部成層圏の水蒸気を測定することができることがわかった。 また、当初想定していなかった課題として、(1)鏡面上の凝結物の形状の測定の応答性・安定性への影響評価、(2)ラジオゾンデの相対湿度計の系統的誤差の調査、(3)測定空気の取り込み手法の改良、などが出てきたが、いずれも解決できる目途がついている。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要に記載したように、熱帯のインドネシアでの飛揚試験においてPID制御パラメータの再調整の必要性があることがわかった。このため、計画を変更して次年度もインドネシアでの飛揚試験を実施する。この飛揚試験に向け、PID制御パラメータの再調整などの課題に取り組み、センサの完成を目指す。また当初の計画通り、量産体制の確立や学会発表や論文化等により利用を促す。 また、ラジオゾンデRS-06Gの相対湿度測定の系統的誤差の発生の問題については、本研究めキーワードである"気候監視"の面から重要であり、下部中部対流圏の湿度の長期変動の検出に大きく影響することが考えられる。本年度に行ったRS-06Gの評価試験を継続して行い、これまでにRS-06Gで測定されたデータにどのような系統的誤差が生じているか定量的に明らかにする。
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