研究概要 |
熱帯低気圧の発生・急発達時における環境場の特徴を掴むため、先行研究で用いられたデータより高品質な長期再解析を用いて、熱帯低気圧の発生・急発達時の環境場の特徴を抽出した。衛星観測から推定された降水量データから、熱帯低気圧の発生・急発達時の対流活動との関係を調べた。顕著な急発達事例について非静力学モデルを用いて、熱帯低気圧の発生・急発達時における対流活動と環境場の相互作用について調べた。水平解像度と境界層スキームの影響について感度実験を通して解析した。 台風状況下の対流活動が顕熱フラックスの変化に対し、どう応答するか数値モデルを用いて調べた。顕熱フラックスの増加(減少)は冷気プールを弱化(維持)し、対流活動が維持されない(される)。熱帯低気圧に関する力学的なダウンスケールを行うためのシステムの構築し、顕著な急発達事例(2010年台風13号)の詳細な解析を行った。1.25度格子のデータから1km格子までダウンスケーリングすることで、衛星観測からの推定値(ベストトラック)と同程度の発達率(-50hPa/day)を再現した。どの程度の水平解像度でこの急発達が再現できるのか調べるため、2,4,6,8kmの水平格子を用いた実験を行った。その結果、2km格子ではベストトラックと同程度の発達率を捉えたが、4km格子より粗い場合は約-30hPa/dayと十分ではなかった。2種類の境界層スキームを比較したところ、境界層での鉛直混合の弱いスキームでは運動量の海面での摩擦消散が小さいことなどが、急発達に関係していることが示唆された。 これらの結果について国際学会で発表した。また、台風による災害が多発するフィリピンにおける台風の強度予測について情報を得るため、台風の強度予測に関する研究会を開催し、ダウンスケーリングによる台風強度予測の有効性について意見交換した。
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