平成24年度は、冬季季節風(西風)の卓越時に津軽海峡の東口で発生する局地的強風について、高解像度の衛星観測データと数値気象モデルを用いて解析を行った。まず、ヤマセ卓越時と同じく、長期間の現場観測データを利用して、津軽海峡の東西気圧差の統計解析を行った。冬季季節風時にも津軽海峡の東西気圧差と海峡の東口の風速は、高相関関係にあることがわかった。海峡の東口の風速に、津軽海峡の東西気圧差が寄与していることは確認できたが、ヤマセ時の方がより明瞭な相関関係が見られた。つぎに、数値気象モデルWRFを用いた1km解像度のシミュレーションによって、津軽海峡の東口に局地的強風が発生した2000年12月3-4日の事例解析を行った。下層において、津軽海峡一体を通過する冬季季節風は、地峡部あるいは海峡部から、南東方向に伸びる3つの強風域を形成することがわかった。その地峡部と海峡部は、北から、噴火湾、津軽海峡の東口、陸奥湾とその南東部の平野である。そして、亀田半島と下北半島の山地の下流に形成される弱風域が、この3つの強風帯を明瞭に分離している。シミュレーションの表層風の分布と、合成開口レーダから導出した高解像度海上風場を比較したところ、3つの強風域の構造はよく一致した。しかし、シミュレーションの方が、弱風域が狭く、弱風域での風速が大きく、強風域と弱風域のコントラストが小さいことがわかった。この差異に対しては、WRFの境界層スキームの違いによる寄与は小さいことがわかった。まとめると、本研究課題では、津軽海峡と陸奥湾および周辺地形を一つの系と捉え、津軽海峡の西部と東部で、それぞれ夏季と冬季に頻繁に発生する局地的強風の事例解析と統計解析により、津軽海峡一帯における表層風の特徴を初めて明らかにした。
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