研究課題
日本海の陸棚斜面域底層に形成される冷水層の変動特性および沿岸域の海洋環境に与える影響の解明を目的として、現地観測、データ解析を実施した。現地観測は若狭湾で実施した。湾内に存在する複数の半島の先端付近に観測地点を設け、5月頃から10月頃まで水温計の係留観測を実施した。この観測は本研究の初年度から行ったので、計3年分のデータを蓄積することができた。この3年分のデータを解析して、6月頃から10月頃にかけて一時的に底層水温が低下する現象(底層への低温水の進入)が生じていること、この一時的な底層低温化が生じる期間は数日で終わる短いときもあれば、1ヶ月程度続くときもあること、また周期性は認められず、発生頻度は年によって大きな違いあることを明らかにした。2010年は3年間のなかでは最も一時的な底層低温化の発生頻度が少なく、2011年は底層低温化が多く発生した。2012年度は、2010年と2011年の中間程度の発生状況であった。また、若狭湾内から沖合にかけて実施された調査船による水温データの収集・分析も実施した。その結果、陸棚斜面付近の底層に存在する冷水層が例年よりも上層まで及んでいるときは、沿岸域において一時的な底層低温化現象が生じやすい傾向があることを見いだした。さらに、若狭湾の熱収支をボックスモデルを用いて検討した。その結果、夏季の若狭湾では表層では対馬暖流の流入に伴い高温化が進行する一方で、底層では陸棚斜面域から冷水が進入するため、湾内の成層構造は強化される傾向があることがわかった。一連の観測やデータ解析を通じて、底部冷水層が陸棚域のみならず、岸近くの海洋環境に対しても重要な影響を与えていることが明らかとなった。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Proceedings of 14th International Symposium on the Efficient Application and Preservation of Marine Biological Resources
巻: 1 ページ: 42-43