研究課題
本研究では、世界的に観測されている地上日射の減光傾向(1980年代まで)・増光傾向(現在も進行中)に対するエアロゾルの影響を解明することを目的としている。初年度は、広帯域日射計の観測値から、エアロゾル光学特性(光学的厚さと一次散乱アルベド)を推定する新手法の確立、日本の観測データ解析、国外の地上日射観測値の収集を行った。光学的厚さと一次散乱アルベドは、広帯域日射計の直達・散乱光に対する依存性の違いから推定した。開発した手法の推定精度を調べるために、本研究の推定値と現在最も信頼性の高いスカイラジオメータ観測からの推定値を比較した。2007年の1年分の観測値を使って両者を比較した結果、年平均の光学的厚さと一次散乱アルベドの誤差は、どちらも約0.01と非常に小さく、新手法の有効性が確認された。次に、確立した手法を用いて、国内14地点の1975年から2008年にかけて観測されてきた観測値を解析した。結果、光学的厚さは0.02減少、一次散乱アルベドは0.2増加していたことが分かった。これらの変動により、快晴下の地上日射は、5%増加していた。また、光学的厚さと一次散乱アルベドのそれぞれの変動による寄与を評価したところ、光学的厚さの寄与は1%、一次散乱アルベドの寄与は、4%であった。さらに、曇天下と快晴下の日射の差から、地上日射に対する雲の影響量の長期変化を評価したところ、有意な変化が見られなかった。これらのことから、日本の地上日射の増光傾向には、雲ではなく、エアロゾルの変動が影響していたことが示された。次年度には、収集した国外の日射観測データを解析することで、より広域のエアロゾルの影響を調べる予定である。
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Journal of Geophysical Research
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