研究課題
世界の地上日射は、1980年代まで減光傾向から、増光傾向に転じている。地上日射の変動は、地表面の物理過程を通して、地球温暖化等の様々な気候問題へ影響をもたらし得る。地上日射の減光・増光傾向の主要因としては、雲とエアロゾルの数十年規模の変動が指摘されている。本研究では、広帯域日射計の長期・広域観測から、エアロゾルの光学特性(光学的厚さと一次散乱アルベド)を推定し、地上日射の減光・増光傾向に対する影響を解明することを目的としている。前年度に、広帯域日射計からエアロゾルの光学特性を推定する手法を確立し、国外の広帯域日射計の観測値を集めた。本年度は、国外のエアロゾル光学特性の長期・広域変動を推定し、地上日射への影響を評価した。解析した地点は、1995~2010年の53地点。このうち、10年以上の解析期間が得られた28地点を解析した。この期間、多くの地点で、地上日射は、変動幅は小さいものの増加傾向にあった。光学的厚さと一次散乱アルベドの変動は、顕著ではないが、ともに増加傾向であった。光学的厚さの増加は、地上日射の減少を招くが、一次散乱アルベドの増加は、地上日射を増加させる。このため、光学的厚さと一次散乱アルベドの両者の増加による地上日射への影響は、結果的に、小さかった。また、解析対象の28地点における雲の地上日射への影響を、全天下の地上日射の観測値とエアロゾルの光学特性を使って計算した快晴下の地上日射との差によって求めた。この結果、多くの地点で、近年の地上日射の増光は、エアロゾルよりは、雲の変動によって起きている可能性があることが分かった。
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J. Geophys. Res
巻: 117 ページ: D07208
doi:10.1029/2011JD017158
Doctor Thesis, Hokkaido University