本研究は、火星メタンの起源解明を目的として、赤外超高分散分光装置の広帯域化技術の確立を目指し開発を進めている。3年間の研究計画の初年次となる平成22年は、仕様検討と光学設計に加え、装置に必要な物品の調達と、機構設計・試作機の製作を実施した。具体的には、まず仕様・設計検討のため、ケルン大学へ中期滞在し、我々の量子カスケードレーザを持ち込む事で双方の性能評価を実施した。その上で、我々の量子カスケードレーザに最適化した外部共振部・波長安定化機構の設計・必要物品の選定を行った。それを踏まえ、平成22年度研究費でグレーティング分光素子ならびに必要な光学部品を購入した。これにより、波長の可変範囲は20cm^<-1>を十分に上回り科学目標を達成できる見積もりである。また、レーザの発振波長を高精度で安定させる必要性があり、その機構製作にケルン大学で開発されたDiplexerならびにガラスセルによるフィードバック方式を採用することとなり、ケルン大学金工場・ガラス工場にて設計・製作が成された。これにより10^6以上の波長安定度が確保されることが期待されており、科学目標には十分である。小型化された赤外ヘテロダイン分光器に実装された本装置は、つくばの国立環境研究所においてフーリエ分光器を用いて、評価試験が実施された。ファブリペロ型量子カスケードレーザの基本的な性能評価、特に外部共振器によってどのような条件下で多波長発振モードから単一発振モードへ移行するか、その手法の確立が成された。平成23年度は以上の機構設計・試作機に必要な検討を重ね、構内実験施設にてガスセルを用いた評価試験を経て動作チェックがなされ、東北大飯館観測所に装着可能とし、地球大気試験観測を実現していく。
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