研究概要 |
最終年度となる平成24年度は、これまで検討を進めてきた外部共振器の分光器搭載を目指し、小型化・Grating角度による観測波長調整可能なシステムに構築した。前年度までの検討を活かし、Grating鉛直・垂直角度ならびに光学系の調整によりフィードバック効率を最適化し単一モード化を達成した。結果、外部共振器距離とGrating角度を変化させることで、発振波長域を20cm-1に渡り大きく変化させることに成功した。これは火星メタン・H2O2観測要請には十分な広帯域化性能であり、従来の液体窒素タイプの20倍以上の改善を果たしたことになる。得られた単一モードの発振スペクトルは、サイドモードがよく抑えられており、赤外へテロ痔案分光器の局発光に最適である。当初は、国内観測所により本装置の確立を目指す計画だったが、東日本大震災により福島飯館における中長期作業が困難となったことから、現在は飯館望遠鏡をハワイ・ハレアカラ山頂へ移設、ハワイ山頂での惑星観測を目指し計画を推進している。赤外観測に最適なハワイ山頂での観測に注力望遠鏡し実施を目指したが、移設計画は本年度研究計画申請時の予定よりも遅れ、平成25年度11月移設完了を目指して進められている。本申請期間中に外部共振器を用いた本格的な観測に至ることはできなかったが、ハワイ山頂における観測を今年度秋には開始し、火星メタン等解明に貢献する予定である。 本研究の成果は、当該分野学術会議にて成果報告がなされてきた。加えて、本研究で開発を進めてきた波長安定化システムと同タイプを搭載した赤外ヘテロダイン分光器の観測データを用いて金星風速変動研究を行い、風速場擾乱が下層で発生した小・中規模重力波が大きく影響を及ぼしている事を世界で初めて突き止めた。成果は、専門誌Icarusにて公表された [Nakagawa et al., 2013]。
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